近年、ワイドバンドギャップ半導体であるダイヤモンド・窒化アルミニウム(AlN)が注目されており、本研究では両半導体を用いてハイブリッドデバイスを構成し、新機能デバイス(例えば発光・受光デバイス)の実現を目指し実験を遂行した。平成21年度では、有機金属気相成長(MOVPE)法により様々な面方位を有すダイヤモンド基板上にAlNを成長させ、その結晶学的な評価および成長条件の最適化を行った。その結果、(111)ダイヤモンド基板上にc軸配向したAlNが再現性良く得られることを見出した。この結果を踏まえ、平成22年度では、新機能デバイスの実現に重要な、アンドープでのダイヤモンド/AlNヘテロ界面のエネルギーバンド構造の評価にまず取り組んだ。不純物濃度1ppm以下に制御した(111)ダイヤモンド基板上に高純度なAlNを成長温度1250℃付近でMOVPE成長させ、ヘテロ界面のバンド構造をI-V測定、C-V測定により評価した。その結果、ヘテロ界面近傍でのダイヤモンドの価電子帯端は、窒化アルミニウムのそれと比較すると、より真空準位に近い側に形成されており、ノーマリーオン状態で正孔が蓄積していることの確認が出来た。そのため、当初研究計画していた発光・受光デバイスの実現を試みる目的を変更し、電子デバイスである電界効果トランジスタ(FET)の試作・評価を本年度の目的とした。ダイヤモンド基板上にAlNを成長させた後、ソース-ドレインおよびゲート電極を形成し、トランジスタ特性を評価したところ、ノーマリーオン状態でp型FET動作を示し、世界で初めてダイヤモンド/AlNヘテロ構造を用いたp型FETを実現した。
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