研究概要 |
平成22年度では,前年度において提案した「高次の可変フィルタに基づく適応信号処理システム」および「高精度可変ディジタルフィルタの実現理論」の発展を目的として研究を進めた.また,これらの研究成果を組み合わせて,従来よりも高い性能を達成するための新しい適応信号処理理論の確立を目的として研究を進めた.研究実績の詳細は下記の通りである. 1.高次の可変ディジタルフィルタに基づく適応信号処理システムの簡単な実現法とその定量的な性能評価 本課題では,前年度の研究で提案した「高次の可変帯域阻止ディジタルフィルタに基づく適応信号処理システム」の理論を発展させ,従来よりも簡単な方法でシステムを実現する手法を提案した.具体的には,ブロック図を用いて周波数変換を記述し,これによって可変フィルタの入出力関係および適応アルゴリズムの数式を簡潔な形で記述することに成功した.さらに,提案法によるシステムを動かしたときの雑音除去性能を定量的に評価し,従来法(適応ノッチフィルタ)よりも高い性能を達成できることを実験的に示した. 2.量子化による特性劣化の小さい高精度可変ディジタルフィルタの実現法の発展 本課題では,前年度に提案した「グラミアン保存周波数変換に基づく高精度可変帯域通過・阻止フィルタ」を発展させ,中心周波数だけでなく帯域幅も調節できる可変フィルタの簡単な実現法を確立した,これは,従来法である高精度可変低域通過フィルタの実現法を,任意のクラスのディジタルフィルタに適用できるように拡張することで達成された. 3.グラミアン保存周波数変換を用いた新しい適応信号処理理論の開発 本課題では,上述の成果を用いて,グラミアン保存周波数変換に基づく状態空間形の可変フィルタを用いた新しい適応信号処理システムを提案した.そして,この提案法により,さらに雑音除去性能を向上できることを実験的に示した.
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