本研究では、次世代無線LAN規格IEEE802.11nに適用できる数GHz帯の高周波かつ高いイメージ信号除去が可能な新しい複素フィルタを取り扱う。本研究課題で取り扱う複素フィルタは、受動フィルタであり、終端抵抗、疎結合かつ損失を含むトランス、キャパシタから構成される。これまでに知られているRCポリフェーズフィルタは、主要部分が受動素子で構成されるが、明示的に抵抗器を含むため、電力損失が生じるばかりでなく、出力端子に電流を流すことができないため、出力端子に入力インピーダンスが十分に高い増幅器を必要とする。そのため、実用可能となる上限周波数は100MHz程度となる問題を抱えている。本研究課題で扱う複素フィルタは広帯域化が容易な抵抗両終端形である。この問題を解決するため、疎結合かつ無損失の複素フィルタの構成法と、密結合ではあるが有損失の複素フィルタの構成法を融合させ、目的とする複素フィルタを構成する方法を検討した。そのためにまず、これまでのいくつかの周波数変換を組み合わせる。本年度は、低次のフィルタを構成する方法を検討し、実際に受動部品のみで構成することのできる回路構造を得ることがきた。トランスの1次と2次側の両者に損失を含ませるため、近似をうまく使う方法を開発した。受動部品は、コンデンサと、ポットコアによるトランスである。次に、計算機シミュレーションによって周波数特性を求め、目的とする動作を行うことを確認した。
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