研究課題
本研究の目的は、ランダムオラクルに頼らず、選択暗号文攻撃に対して安全な(CCA安全な)公開鍵暗号の一般的構成法を示す(またはその不可能性や条件付き不可能性を示す)とともに、その経済学的意義を明らかにすることである。平成22年度の計画では、技術研究として、(1)前年度に考案した「到達点はCCA安全ではないけれども同じ出発点からの到達度としては世界最高の方式」を改善し、その安全性証明理論とともに完成度を高める計画であった。また、(2)構成不可能性に関して詳細な理論を構築して、本研究で採用すべきアプローチか否かをチェックする予定であった。さらに、(3)経済学的研究として、最適投資モデルに新たな視点を導入し、実証研究を設計・試行する計画であった。計画通りの体制で研究を進めた結果、(1)に関しては、まず、証明可能安全性の技術力を高めるための研究(時間に基づく開封制御など高機能化を伴う暗号の一般的構成法、認証を伴う暗号の安全性モデル、両者と関連した典型的な技術である高機能署名)で厳密な証明を完成させた。その技術力を駆使し、前年度に考案した方式とその周辺理論の完成度を高め、公開鍵暗号分野で一流と見なされている国際会議に論文採録されるに至った。(2)に関しては、不可能性のアプローチは研究目的達成に適さないことが確実となった。(3)に関しては、当該技術の経済学的意義を「安全性に関する品質保証の差」と捉えて暗号モジュール選択に応用するモデルを提案した。新しい研究分野であるため、試験段階であるにもかかわらず注目され、国際会議の招待講演等の実績につながった。経済学的アプローチをよりマクロに適用する実証研究では、当初予定になかった拡張(相互依存性の導入)が有効である可能性が判明したので、期間を延長して研究を行った。試行の結果、拡張が実証研究に有効であることが明らかとなった。
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IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
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Lecture Notes in Computer Science
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