研究概要 |
当初の研究計画では,構造を有するLDPC符号を用いた量子誤り訂正符号の設計を目指していたが計画通りの方法では,従来からある量子誤り訂正方式を上回る性能を引き出すことができなかった.そこで,申請書に書いた方法とは別の次のようなアプローチを試した. 萩原と今井は,quasi-cyclic(QC)LDPC符号を用いたLDPC-CSS符号を提案している.このLDPC-CSS符号のパリティ検査行列は任意の偶数の行重みL>=4と列重J(L/2>=1>=2)を有するように設計可能である.萩原と今井のLDPC-CSS符号の構成法を次のように多元LDPC符号に拡張した. この方法では,列重みが2であり行重みがLであり,直交するパリティ検査行列ΓとΔを,次の手順によって構成している.まず萩原と今井の方法により,列重みが2であり行重みがLである2元MxNパリティ検査行列CとDを構成する.CとDの非零成分を,GF(2^m)上の非零要素をとる変数と置き換えて,新たに列重み2,行重みLのGF(2^m)上のMxN行列ΓとΔを考える.次にΓとΔの非零成分を決定する.この問題は一般には極めて難しい問題として知られているGF(2^m)上の連立2次多変数方程式となってしまう.しかし,幸運なことに,L=2の萩原と今井の構成法から得られたCとDから作られたΔとΓに対しては,この問題を整数上の線形連立方程式に帰着させることができる. この方法で得られた,量子誤り訂正符号は従来の効率的に復号できる量子誤りの中で最も高い性能を有することを数値実験により確認した.
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