平成23年度は、無線多中継伝送に適した自動再送要求(ARQ)方式の検討として(1)再送端末を中継端末群から適応的に選択する再送制御方式の提案(2)実用環境である特に流星バースト通信路に適応した再送制御方式に適した同期方式の提案、を行いスループット特性に基づいて提案方式の有効性を確認した。 (1)パケット信頼度推定に基づく再送制御における中継端末の適応選択方式の特性評価 硬判定中継を適用した多中継伝送では、パケット中継ごとにパケット内の誤りビット数が増加するが、パケットの信頼性が高いと判断される場合、中継端末は次の端末にパケットを中継する。一般的な再送制御では、受信端末が再送を必要と判断したとき、送信端末に再送を要求する。しかし、送信端末まで再送を要求するには、再送要求パケットの伝送時間が長くなり、スループットの劣化の原因となっている。そのため本研究では、LDPC符号の性能に基づいてパケットの信頼性を判断し、送信端末ではなく、適応的に選ばれた中継端末に再送を要求する方式を提案した。本方式ではパケットの信頼性の判定基準を導き、そこから再送要求する中継端末を決定する。本提案方式の特性評価の結果、スループットが改善することを示した。 (2)実通信環境としての流星バースト通信路に適した再送制御方式の特性改善 これまで実通信環境として流星バースト通信路に代表される確率的減衰通信路に着目し、それに適した再送制御方式であるGBi-ARQ方式を提案し、その性能評価を実施した。GBi-ARQ方式は畳み込み符号に基づく再送制御方式であり、それに基づいた簡易な信号の同期方式が必要であった。本研究では、GBi-ARQに適した逐次型の同期方式を提案し、特性を評価した。その結果、スループット特性が大きく改善することを示した。
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