1対ツイストペア線を用いた車載イーサネットの全二重10 Mbpsの実現に関して,簡素な排他的論理和回路による送受信合成信号の送信信号キャンセル方式とクロック速度の倍速化によるビット単位時分割複信(TDD)方式を提案した.これらの手法では,1 Gbpsのイーサネットで利用されるハイブリッド回路を用いずに1対ツイストペア線での全二重通信を実現できるため,車載通信チップの低コスト化が期待される.1対ツイストペア線による全二重通信の実現手法に関する2つの提案は,それぞれ特許として出願している. 一方,車載イーサネットには,ペア数の低減や中継コネクタによる多段接続に伴う電磁環境両立性(EMC)の問題がある.EMCの評価のため,Tパラメータを用いたツイストペア線の伝送特性の解析手法を確立した.この成果は,電子情報通信学会の総合大会にて発表した. 車載ネットワークシステムのサブネットワークとして,ネットワークバスを利用したコントローラエリアネットワーク(CAN)がある.本研究課題において,CANの高速・高多重化を妨げるリンギングを解消する方法として,短パルス伝送路符号方式を提案してきた.電子回路シミュレータによる評価や試作機による実証実験に基づき,短パルス伝送路符号方式の実現可能性が明らかにされた.短パルス伝送路符号方式の研究成果は国際会議IEEE VTC 2013 Springの論文として採録された.さらに,短パルス伝送路符号方式を改善するためのイベント駆動型インピーダンス整合方式を提案し,その成果を電子情報通信学会の総合大会にて発表した. また,電力線通信(PLC)の標準規格であるIEEE 1901に基づく信号を車載ネットワークバス上に流すことにより,その伝送特性を実験的に評価した.その結果,多分岐を含む車載ネットワークバスにおいても,数十Mbpsを実現できることが実証された.
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