研究概要 |
無線スペクトル使用状況など電波環境情報を学習し,これに基づき適応的に無線通信を行うコグニティブ無線が注目を集めている.本研究の目的は,コグニティブ無線の要素技術の一つであるスペクトル共用について,各制御主体間の相互作用に基づくダイナミクスを,進化ゲーム理論及びその周辺理論の導入によりモデル化し,そこで知見が得られた諸特性を実現する方式を提案することである. 平成21年度は初期検討として,通信サービス提供事業者間のスペクトル共用のダイナミクスモデルを作成し,スペクトルを交換する頻度と,加入者の行動の予測精度との間の関係を明らかとした.この成果はハワイで開催された国際会議IEEE GIobecomで発表した. ついで,進化ゲーム理論の周辺理論と言える少数派ゲームの知見を用い,地理的に離れた場所でスペクトルを再利用するシステムのための自律分散的送信スケジューリング方式を提案し,その特性を明らかとしつつある.スペクトル共用システムでは一般に,システム問で情報のやりとりをすれば特性を向上しうるが,そのためのオーバヘッドが問題となる.本方式ではスペクトル利用に優先権を持つシステムの情報1ビットのみを用いる方式であり,同一の情報を用いる方式の中では高い効率が得られることが明らかとなっている.この成果は電子情報通信学会ソフトウェア無線研究会で2回発表したほか,国際会議にも現在投稿中である.
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