研究概要 |
コグニティブ無線環境では,複数の無線局それぞれが環境を認知し,認知した情報(干渉量,衝突率,要求品質など)に応じて使用可能な無線リソース(周波数帯域,送信電力)を制御することが求められる.本研究では,このような極めて動的で複雑な無線環境において,個々の無線局が環境に対して適切に行動(周波数チャネル,送信電力の大小,伝送形式の決定)できるようなメカニズムについて研究を行っている.今年度は,特に,複数の無線局が無線リソースを使用する権利を競合的に獲得する問題に取り組んだ.まずこの問題を無線局同士の「交渉」としてモデル化した.つまり,無線局は他の局との交渉を通じて自身の獲得量に対して妥協する.そして,ゲーム理論におけるナッシュ交渉の理論を導入し,その理論に基づいて通信制御アルゴリズムと通信プロトコルの設計を行った.コグニティブ無線環境を模したシミュレーションを構築し,設計したアルゴリズムとプロトコルを評価した.その結果から,周波数利用効率,公平性,送信エネルギーの利用効率の点で,提案手法は単純なヒューリスティック手法に比べてはるかに高い性能を与えることを示した.得られた成果を,国際会議PIMRC (Personal Indoor and Mobile Radio Communications)で発表した.この議論をふまえて研究を発展させ論文誌IEEE Transactions on Wireless Communicationsに投稿し,採択通知を得た.さらに電子情報通信学会総合大会でも発表を行った.
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