研究概要 |
ディジタルコンテンツの不正コピーより,不正者を特定する技術である電子指紋技術において最も脅威となる攻撃は,複数のユーザによる結託攻撃である.本研究では,申請者が以前に提案したCDMA技術に基づく電子指紋方式において,その検出器の精度を向上させる手法を考案した.また,その評価を行う過程で,電子指紋情報を埋め込む際と結託攻撃の際に生じる量子化誤差の扱いによって,埋め込んだ信号の減衰量が劇的に変化することを発見した.それらの理論的な解析を行い,その減衰量を制御する量子化法を考案した.計算機シミュレーションにより,量子化法による減衰量の違いを数値化し,提案量子化法により目標とした減衰量を満足する値が得られることを確認した.これらの成果により,スペクトル拡散技術を用いた電子指紋方式では,量子化法に気をつけなければ,設計した結託耐性能力が実際には低下する可能性があることを示すことができた. 一方,結託耐性符号として最近注目を浴びているTardos符号の構成法を解析し,カオス写像として有名なロジステック写像を用いれば簡単に実装できることを示した.また,検出能力を統計的な手法で解析し,検出できる不正者の人数の理論値を導出した.検出の際に計算する相関スコアは,統計的にガウス分布することが従来研究より発見されており,申請者はその分布を用いて無実のユーザを誤って検出する確率(誤検出率)を一定とする条件の下で,理論的に目標とするしきい値を計算する手法を提案した.設定した誤検出率に対して,検出できる不正者数の理論値の正当性を確認するため計算機シミュレーションを行い,実験値が理論値に極めて近い値を示すことを確認した.
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