研究概要 |
多数のセンサデバイスをネットワークで結んだ通信システムを用いてセンシングを行うセンサネットワークは多様な応用分野を持ち,その理論的枠組みの構築が求められている.近年多端子情報理論を用いてセンサネットワークを数理モデル化し,その基礎的性質を考察する研究が一定の成果を挙げている.そこでは特に誤りなし,あるいは微少な誤り以下で通信可能な条件を考察する研究とその条件を達成するアルゴリズムを構築する研究の二つが研究対象となっている.これら従来研究においては,情報源や通信路の確率構造を既知と仮定している場合がほとんどであるが,実用化を考えた際には確率構造が未知である場合も少なくないと考えられる. 本研究では,従来仮定されていた情報源の確率構造が既知であるという仮定が成立しない状況において研究を進め,以下のことを明らかにした.1.1対1通信モデルにおいて情報源の確率構造が未知であるという状況を数理モデル化し,あらかじめ設定した微少な誤り以下で通信が可能な条件を考察した.2.1.で得られた成果を拡張し,多対一通信モデルにおいて情報源の確率構造が未知である状況をモデル化し,(1)誤りを許容しない場合,(2)あらかじめ設定した微少な誤りを許容する場合,のそれぞれにおいて通信が可能な条件を明らかにした.得られた成果は,従来理論的に考察されていなかった情報源の確率構造が未知の場合を対象にしているため,対象が広範囲であり,その応用上の意義は大きいと考えられる.
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