研究概要 |
近年情報通信の基礎理論の一つである多端子情報理論を用いてセンサネットワークを数理モデル化し,その基礎的性質を考察する研究が成果を挙げている.そこでの解析の多くは情報源や通信路の確率構造を既知と仮定している.一方応用を考えた際これら確率構造は未知であることも多く,多端子情報理論における確率構造が未知の場合の解析は重要な研究テーマの一つと言える.多端子情報理論を用いたセンサネットワークの符号化問題は1.情報源符号化問題,2.通信路符号化問題,3.情報源通信路結合符号化問題の3つに大別できる.本研究は,これら3つの問題において情報源や通信路の確率構造が未知である場合を対象とし,解析を行ってきた.特にこれまでの我々の研究では,一対一のネットワーク,多対一のネットワーク上で,3.の符号化問題を考えてきたが,平成22年度は多対一のネットワーク上で,1.の符号化問題に対して考察を行った.まず現在までの文献調査を行い,その元で従来よりも精密な評価基準である2次達成可能性を用いた場合の伝送可能条件(微少な誤りを許容したもとで通信が可能となる為の条件)を導出した.従来多対一の1.情報源符号化問題において2次達成可能性を用いた評価は行われていない.この意味で本研究は新規性が高い.さらにこの得られた成果を情報源の確率構造が未知の符号化問題に対しても適用した.得られた結果は,情報スペクトル理論に基づいており,多対一のネットワーク上での2次達成可能性においても情報スペクトル理論が有効であることを明らかにしたと考えることも出来る.
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