研究概要 |
ディジタル通信では,通信路上の雑音は通信品質を劣化させる要因として扱われるが,その一方で雑音を利用することで(情報理論的に)安全な暗号方式を実現できることが知られている.また,複数人の間で安全に関数を評価するマルチパーティ・プロトコルにおいて重要な役割を果たす紛失通信と呼ばれる暗号プリミティブを可能な限り弱い仮定に基づいて実現することは重要な課題である.本研究課題では,連続的雑音通信路を利用することで,情報理論的な安全性を有する紛失通信を構成することを目的とする. 本研究では昨年度に雑音通信路として基本的なモデルである加法的白色ガウス通信路を前提とした紛失通信の基本的なプロトコルを与えた.これを基礎として本年度は,1.通信路へ入力される信号集合に関する一般化,2.より広いクラスの通信路に対する拡張,3.プロトコルの内部で行われる誤り訂正の手法,に関して検討を行った.課題1.については,代数的な構造を有する信号集合を導入した上で,それらを使用した際の情報理論的効率について評価を行っている.課題2.については特に陸上移動通信で見られる通信路において有効なプロトコルを与え,現実的な通信環境においても暗号プリミティブを構築できることを示している.課題3.に関しては,広範なアルファベットに対して効率的な誤り訂正を行うための基礎的な検討を行った.
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