| 研究概要 |
ディジタル通信では,通信路上の雑音は通信品質を劣化させる要因として扱われるが,その一方で雑音を利用することで(情報理論的に)安全な暗号方式を実現できることが知られている.本研究では,雑音通信路により安全な暗号プリミティブを構成すること,およびそこで必要とされる符号化方式を与えることを目的としている.
本年度は,マルチパーティ計算において重要な役割を果たす紛失通信を実現するためのプロトコルを対象とし,そこで用いる符号化の方式に関して検討を行った.特に多値情報源の出力を圧縮符号化することを主眼とし,相関のある情報源からの出力が補助的情報どして復号器で利用できる状況を想定する.二元線形符号により任意の情報源アルファベットサイズに対して効率的に符号化および復号が行える手法を提案した.さらに,低密度パリティ検査符号を用いることでSlepianとWolfの理論限界に迫る圧縮性能を達成できることを示した.この符号化法は,3元対称情報源に対して先行研究として発表されている非正則多値LDPC符号に基づく手法よりも優れた特性を発揮することを確認している.
さらに,白色ガウス雑音通信路およびフェージング通信路に基づく情報理論的に安全秘密鍵共有方式に関して検討を行った.このプロトコルは前年度までに扱っている紛失通信を含む一般的なプロトコルとして捉えることができる.安全性を自然に保証することが可能な信号アルファベットの設計に関して提案を行い,情報理論的な効率に関して評価を行った.
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