研究概要 |
昨年度は,電子機器の静電気放電に対する機器耐性に対する基礎的検討として,国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)規定の帯電人体からの静電気放電に対する電子機器の耐性試験(IEC61000-4-2)におけるESDガンの気中放電と接触放電の厳しさの評価指標の評価方法等を提案した.IEC規定の試験電圧よりも低い充電電圧における気中放電は接触放電よりも厳しい試験となりうるが,帯電人体からの実際の静電気放電と同様に火花を伴うため,その火花の特性を把握する必要があった.本年度は,低電圧においては接触放電よりも厳しい試験となる可能性がある気中放電について,昨年度に引き続いて広帯域の放電電流測定を行い,測定に用いたディジタルオシロスコープの周波数帯域を4次のローパスフィルタ(Low Pass Filter : LPF)と仮定した上で放電電流波形の立ち上がり時間を推定した.その結果,数百ボルトの低電圧ESDの放電電流波形の立ち上がり時間は15ps程度と非常に高速であることがわかった.また,低電圧の気中放電の火花の特性を理解するために,火花抵抗則を用いた放電電流予測のための等価回路モデルを提案した.同モデルには,Rompe-WeizelとToeplerの2種の火花抵抗則を用いた.その結果,Rome-Weizelの火花抵抗則では放電電流の立ち上がり部分を精度よく模擬できること,それに対しToeplerのそれでは放電電流波形の尾の部分を精度よく模擬できることがわかった.今後の課題として,実際の情報通信端末などの電子機器に低電圧のESDガンの気中放電で放電した際の放電電流,絶縁破壊電界などの特性把握を行うことが挙げられる.
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