本研究では、今後の半導体製造をはじめとするナノスケール加工を行う製造装置および生産ラインの管理において、良品のスループット(以下、生産性と呼ぶ)を最大化する工場内物流の管理方法および装置や生産ラインの設計方法として、平成21年度には以下の2つの課題を解決することを目的とした。 課題1. マルチチャンバ装置の生産性を決める内部の物流管理および生産性重視の装置設計について、科学的な検討を行う. 課題2. 装置内部および生産ライン上で起こる待ち時間が製品品質や装置品質に与える影響を適切に生産スケジュールに反映する. 平成21年度の成果として、課題1については、シングルウエハマルチチャンバ方式の装置について、ブロッキングを考慮した待ち行列とTOC理論に基づくマルチチェインバ装置内部のモデル化および問題箇所抽出の方法をまとめた。また、この方法を実工場で運用中の製造装置に適用し、モデル化・改善提案を行い、新たな研究課題の発見にも至った。 課題2.については、生産ライン上においてリアルタイムで多クラスの品質特性を高精度に予測する手法を考え、予測された品質クラスに応じてエンジニアリング業務や生産スケジュールの見直し等の対応を駆動する統一的で全体的整合のとれた業務駆動システムのフレームワーク(エンジニアリング・チェイン・マネジメント)を構築した。また、それが生産システムの最適合の具現化例であり人間工学の研究においても重要であることを示唆した。 これらの成果を、国際的な雑誌論文(2010年出版予定)と学会発表(2009年11月)に公表した。
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