研究概要 |
ピンポイント電子スピン共鳴(ESR)法は、局所領域のESRスペクトルを観測する手法であり、ESR画像法などでは取得が困難であった複数の活性酸素種や活性酸素の存在状態などを様々な情報を取得できる特徴がある。この手法を実現するためには、150Hz程度の周波数で磁場勾配変調を発生させる必要がある。小動物を対象にした実験で使用するループギャップ共振器では、シールドケースを使用するため、シールドケースの渦電流によって、磁場勾配変調が十分に印加できない問題がある。本研究では、この渦電流を軽減するために、シールドケースに内側に磁場勾配コイルを内蔵し、磁場勾配を印加することを試みた。具体的には、「磁場勾配コイルの製作」、「磁場勾配コイルの特性評価」、「コイル用電源の選定」、「シールドケースの試作・整合性回路の接続」を行った。磁場勾配コイルは、x-,z-軸に対応したコイルを製作し、板厚3mmの銅板を切り出し、シールドケース内に内蔵できるように厚さを調整した。それぞれのコイルのインピーダンスは、200mΩ以下(@200Hz)であった。このインピーダンスの値より、電源の仕様を定め、x-軸では、25Arms,z-軸では、15Arms以上の電流を印加できる電源を選定した。シールドケースは、従来の大きさでは、コイルを内蔵する空間を確保できないため、幅を約12mm拡張し、内蔵できるようにした。実際に、このシールドケースに内蔵した磁場勾配コイルに電流を印加し、ガウスメータを用いて、磁場勾配強度を測定した。この結果より、予想させる空間分解能は、約5mmであることが分かった。ラットの臓器や脳を大きさが5mm程度またはそれ以上であるため、部位別の生命現象を捉えるための十分な性能を有していると判断した。
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