研究概要 |
バイオイメージンクやMEMS (Micro Electro Mechanical Systems:微小機械やその制御回路をシリコン基板上に一体化したシステム)などの分野の発展により,顕微鏡は重要な要素技術となっている.これらの分野で求められる顕微鏡の能力として,(A)試料を高分解能で観察(B)試料を広い観察領域(広視野)で観察(C)試料を3次元的に観察の3点が挙げられる. このような顕微鏡が実現できれば,バイオイメージングでは,広範囲に存在する複数の生体を高分解能かつ立体的に観察ができ,また,大規模化・微細化が進むMEMSの動作検証にも役に立つ.しかし,これまでの顕微鏡では(A)~(C)は互いにトレードオフの関係にあり全てを同時に満たすことは難しい. ホログラフィの原理を応用したデジタルホログラフィック顕微鏡(Digital Holographic Microscope : DHM)は,試料の光強度や奥行き情報などをホログラム画像上に同時記録できるという他の顕微鏡にはない特徴を持つ.ホログラム画像上には試料に関する光情報が記録されるため,このホログラム画像からの光伝播をコンピュータで計算することにより,原理的には自由自在に試料の再生像を得ることができる. しかし,これまでの研究では,ホログラム画像から再生像を得る計算時間が膨大であり,リアルタイム計測が困難な問題点が残されたままである.この問題を解決するために,本研究ではGPU (Graphics Processing Unit)を用いたDHMシステムを試作し,再生像のリアルタイム再生を行った.また,ホログラム画像には試料の光情報が全て記録されているため,従来の顕微鏡では困難な広視野で試料を観測しながらある領域を高分解能で同時観察できる顕微鏡の実現が期待できる.我々は,前述の(A)~(C)を同時に満たすことを目的とした,試料を任意の奥行き距離と広視野・高分解能で複数同時にリアルタイム観察できるDHMシステムの開発を試みている.
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