本研究の目的は、センサを結晶のように対称性よく配置することにより、従来困難であった拡散性雑音の抑圧や拡散性雑音下ての定位を可能にする新しいアレイ信号処理の枠組みを確立することである。特に2年の研究期間の間に、理論面を整備、拡充し、実環境への適用範囲の拡大を行うことを目指している。昨年度は、以下のような実績を得た。 1)等方性雑音直交化を実現する結晶型アレイ配置を群論的に検討し、群論から導出される必要条件を3次元の点群に全てに対してチェックすることにより、雑音共分散行列のブラインド無相関化を行うセンサ配置として、これまで得られていた、正多角形、正多角柱(ねじれ含む)、等面四面体(長方形含む)、直方体、正多面体の他の、新たな配置を発見した。 2)対称性の概念を一般化し、任意のセンサ対の間のクロススペクトルの性質に着目することで、クロススペクトル虚部法という、任意配置に適用可能な新しい雑音抑圧法の枠組みを確立した。これにより、雑音抑圧の適用範囲が大きく広がった。 3)複数音源定位手法として有名なMUSIC法を拡張し、拡散雑音下での高精度な複数音源定位を行うための手法: CRYSTAL-MUSIC法を定式化した。具体的には共分散行列の低ランク性の仮定に基づき、行列補完という数学的な技術と拡散雑音共分散行列のブラインド無相関モデルを組み合わせた手法を定式化し、基礎実験によりその有効性を確認した。 このうち1)は2010年度発表予定、2)は国際会議発表済み、3)は国際会議投稿済みで2010年度発表予定である。
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