研究課題
エタノールガスを簡便かつ選択的に計測するため、アルコール脱水素酵素(ADH)の触媒反応により生成される還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の蛍光を、高輝度紫外線LED(UV-LED)光源を利用した光学システムを用いて検出する、エタノールガス用バイオセンサを作製した。まず、親水性PTFE膜上に、ADHと、ポリマーの一種であるPMEHとの混合液を塗布・含浸させ、冷蔵室にて3時間乾燥させることにより酵素を包括固定化した。次に、光ファイバプローブをシリコンチューブ及びアクリルパイプからなるフローセルに組み込み、ADH固定化膜をファイバ先端に密着するように取り付け、エタノールガス計測用バイオセンサとした。ここで用いたフローセルは、液相セルと気相セルとから構成されており、リン酸緩衝液を循環させることが可能な構造であることから、連続的にエタノールガスの検出が可能となる。作製したセンサの特性を調べるため、バイオセンサの気相セルにエタノールガスを導入したところ、ガス濃度に応じたセンサ出力の増加が観察され、エタノールガスを0.32-300.0ppmの濃度範囲で定量が可能であった。また、エタノールガスと同様の手順にて、異なる種類のガスを導入したところ、エタノールを含まない試料についてはほとんど応答を示さなかったことから、酵素の基質特異性にもとづくガス選択性が確認された。以上の結果から、本センサは、アルコール代謝の評価や酒気帯び運転の判断ツールとして有効であると考えられる。本センサは既存の半導体式ガスセンサに比べ、高感度且つ選択的なエタノール検出が可能であるうえ、センサデバイスの小型化が可能であるため、汎用性が高まると同時に集積化することが可能である。したがって、パターン認識による匂いの識別や、携帯用簡易センサとして他の疾病の診断による医療分野や環境計測のモニタリングへ応用展開できるものと考えられる。
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Talanta
巻: 83 ページ: 960-965
Microchimica Acta
巻: 173 ページ: 199-205