研究概要 |
脳磁図逆問題や漏洩磁束探傷など広範な応用があるソース推定逆問題に対し,以下の成果を得た.まず本年度の第一の目標であった,二次元平面上で,ソースを囲まない開曲線上でのデータからソースを直接再構成する手法に関して,複数の極をもつ有理関数が満たす微分方程式から出発し,これに荷重をかけ開曲線上で積分することで,極の基本対称式に関する線形方程式が得られることを示した.従来の閉曲線データを仮定した直接法や,開曲線上データを用いた線形最小二乗法に対し,精度・安定性ともに向上することを数値シミュレーションで示した.さらに本手法の推定結果を初期値とし,非線形最適化をかけることで,大域最適解に収束することを示した.第二・第三の目標であった,広がりをもったソースを表現する多重極ソースモデルに対する直接解法およびその脳磁場データの適用に関して,双極子十四重極子を用いた脳磁場データ解析を行った。双極子モデルだけでは表現しきれない,近接した逆向きソースも精度良く推定できることを数値シミュレーションにより示した.更に第四の目標であった,配管探傷において直接解法で必要な量を直接計測するセンサの製作に関して,漏洩磁束の1次フーリエcos係数を計測するセンサと1次フーリエsin係数を計測するセンサを同心で配置し,それらの出力比から,配管上の傷位置の円周方向位置を推定するセンサシステムを開発した.直径500mmの磁性管内壁および外壁に存在するφ10mmの円形傷の円周方向位置が定位できることを実験的に示した.
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