湿布薬に代表されるように経皮吸収による投薬法は、その効果が長時間持続するなど他の投薬法にはないメリットを有する。経皮吸収法による投薬量は濃度拡散にのみ依存しているため容態の急変時などには対応できない。外部信号などによりその投薬量を制御できるようになると、刻々変化する必要量に対応でき、さらなる医療的な実用性の向上が期待できる。空間電荷測定を用いてこの経皮吸収型テープ中における薬物挙動の可視化を行い、電気的制御の最適化を行うことが当該研究の目的とした。 本年度は単体試料、複合試料および化学分析機器による薬物挙動制御の検証および空間電荷分布の把握を実施した。薬物添加/薬物無添加複合層を用いて電界印加後に両層を分離し、無添加層のみをフーリエ変換型赤外分光計(FT-IR)により分析した結果、電界を印加した試料は薬物10wt%添加単体試料とほぼ同一波数にスペクトルが現れた。一方、電界印加なし試料はそれがほとんど現れなかった。これは、薬物添加層から無添加層へ電界印加により薬物が掃引され、この電界下において掃引薬物は薬物としての特性を失っていないことを意味し、用いた薬物は電界により掃引できることがわかった。また、薬物添加層と無添加層をもつ複合試料中の空間電荷測定から、界面付近に負電荷の形成が確認され、薬物添加層から無添加層への負電荷の移動が観測された。薬物添加単体試料においては負極性空間電荷の蓄積が確認されたことなどから、経皮吸収テープ中の薬物挙動を空間電荷により観測でき、薬物挙動を電気的に制御できる可能性が示唆された。
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