研究課題
当該年度には、交付申請書記載の研究の目的である、人体形状の特徴を利用した信号処理により人体の複雑な形状を高い精度で立体画像化することを実現するため、研究実施計画にあるとおり実際の歩行運動の測定に基づいた適切な運動モデルの開発を行い、開発した運動モデルに適用可能な運動および形状の推定手法を開発した。具体的には歩行運動をレーダおよびビデオカメラで同時に測定することで運動モデルについて検討を行った。定常的な歩行運動をほぼ一定の信号対雑音比で測定するため、新たにトレッドミルを導入し、トレッドミル上を複数の被験者に歩行させ、ビデオカメラおよびレーダによる測定を同時に行った。また、指向性の高いホーンアンテナを用いて、人体の各部分にビームを照射することで異なる人体の部分に対してそれぞれ受信信号を解析した。時間周波数解析により、歩行に伴う周期的変動を確認した。さらに、目標位置の視線方向変動および信号対雑音比の変動を定量的に調べた。体の各部分のこれら変動成分の標準偏差を求め、複数の被験者に対するデータからこれらの標準偏差の個人差が比較的小さいことを確認した。このことにより、得られた運動モデルに対する知見が一般的な人体イメージングに対してよく適合することを明らかにした。さらに、この提案歩行モデルに適合するよう、従来の人体イメージング技術を拡張した。測定中に人体の形状が変化することで、受信されるエコーの遅延時間に予測困難な不確定性が生じる。このような場合においても安定した像を得るために送受信アンテナの中点を一定としつつ両アンテナ間距離を変化させるCMP (Common Mid Point)測定に対して成り立つ新たなイメージング変換式CMP-IBSTを解析的に導出し、この提案変換式により、推定レンジの不確定性が大きい場合にでも高精度なイメージングを実現することを数値計算により明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
研究の目的に記載のとおり、大型UWBアンテナアレイを整備し、人体形状の特徴を利用した信号処理による人体の複雑な形状を高い精度で立体画像化する技術の開発をこれまでに達成した。人体の歩行に伴う影響を信号処理により補正することで、分解能および精度を大きく改善できることを示した。当初の計画から遅れることなく、研究成果を得ている。
最終年度となる平成24年度には、これまでに開発した大型アレイ、および歩行軌跡の推定技術、歩行運動による信号の周期的変動モデルを組み合わせることで、最終的な目的であるアレイアンテナによる高速かつ高分解能な人体イメージング技術の性能評価を行う。研究計画に記載のリアルタイム処理については、研究室設備であるサンプリングオシロスコープおよびベクトルネットワークアナライザのデータ転送速度の問題により、実証することは困難である。ただし、リアルタイム処理を実現するために必要な要素技術はハードウェア面を除いて、開発および実証することが可能である。こうしたことから,研究計画記載の技術的課題はすべて解決されることが予想される。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (12件)
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