研究概要 |
本研究では、乳濁液中の寄生細菌に対する迅速かつ簡便な検出を実現するため、誘電泳動による輸送操作と濃縮媒質の静電容量計測を併用した分離検出技術の確立を目標としている。本研究を円滑に遂行するために、本年度(平成22年度)は前年度の研究成果を踏まえて、(1)電機操作条件に対する菌泳動特性の再精査、(2)マイクロ容量計の構築及び電気容量の実測、(3)高導電性エマルション溶液への実応用の検討を行った。 (1)に関しては、前年度の特性解析を補完すべく、菌濃度、電圧振幅、流速における菌捕集効率を詳細に計測し、その相関関係を明確化した。(2)に関しては、申請者らが開発してきた誘電泳動マイクロフィルタを改造するとともに、簡易LCRメータと組み合わせることによってマイクロ容量計を実際に構築した。金属加工油希釈液に懸濁した大腸菌、緑膿菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌の捕集量を容量増加の実測から推定した。結果として、10Vpp程度の電圧でも,10^5個/mlオーダーの分離検出が可能であることがわかった。(3)に関しては、高導電性かつ浮遊物質を有する茶、ジュース、ビールなどの飲料について,本手法を用いた計測を行った。茶については適度な検出感度を有することが分かった。しかしながら、ジュースやビールでは不純物や発泡の影響が大きく、画像観測も困難な状況であった。汎用性を高めるためには、更なる改善が必要である。なお、本研究の関連成果は、国内学会(日本食品工学会,静電気学会)にて発表されている。また,前年度から継続的に行ってきた捕集効率化に対する誘電泳動セル構造の検討を投稿論文(Microelectronic Engineering)としてまとめている。 以上のことから、本研究では当補助金を有効に活用し、到達目標を十分に達成できたと思われる。
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