研究概要 |
1.マイクロホンアレイによる3次元パルス放射方向計測システムについて,計測データから結果の導出を自動で行うためのプログラムを作成した.これでまで1回の実験データを解析するに要していた時間(数時間)が大幅に短縮され(数分程度),定量的な評価が可能なデータ数の確保ができるようになった. 2.構築した上記の計測システムと,コウモリの頭部に小型FMワイヤレスマイクロホンを搭載したテレメトリ計測を併用し,障害物が設置された観測室内を飛行するユビナガコウモリの水平方向のパルス放射方向,放射タイミング,放射音圧と飛行軌跡を計測・分析した.その結果,コウモリは同じ障害物環境下を複数回飛行することで,飛行軌跡を平滑化させ,パルスの放射頻度や音圧を減少させることがわかった.また,軌跡を障害物の配置の複雑さに依らず,コウモリの注視方向と飛行の旋回率の間には先行時間0.12秒で一定の制御関係が成り立つことがわかった.さらに注視方向と飛行軌跡の関係について,ドライバーの視線変化の関係式に当てはまることを確認した. 3.上記のマイクロホンアレイシステムとほぼ同様のシステムを改良し,複数のマイクロホンアレイによって野外での野生コウモリに対する飛行軌道の計測を行った.その結果,広範囲にわたってコウモリの獲物探索時の飛行軌跡を計測することができ,いくつかの新しい知見を得ることができた.たとえば長い放射パルス間隔が,捕食頻度が低い状況で多く観測されることから,獲物の分布密度が低い際には,時折探索範囲を広くすることによって哨戒距離を拡張し,効率的な探索経路選択の手がかりにしている可能性が示唆された.また獲物の分布密度によって,特徴的な飛行軌跡のパターンが見られることがわかった.
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