研究概要 |
平成21年度はマイクロ波CTのハードウェア開発を進め,システム全体の6割が完成した。平面波照射用コルゲートホーンアンテナが完成した。本体の長さ355mm×外径φ160mm,アルミ合金製で中心周波数10GHzとして設計した。円錐ホーンアンテナの内側に深い溝構造を与えると交差偏波が抑制されて平面波が放射される。平面波を利用すると断層像再生のデータ解析過程が簡略化され,実用段階における解析時間を大幅に短縮される。コルゲート構造は機械加工が大変難しいため,核融合研の西村輝樹氏と共同開発を行い,サイズが異なる中心孔付き薄円板を多数積層することで技術的課題を解決した。周波数変調回路が完成した。この回路は,超高温プラズマ実験(産総研TPE-RX)のマイクロ波イメージングで動作実績のある高周波回路を流用した。電圧制御発振器と周波数変調素子を組み合わせて8.5~13.5GHz帯を自在に周波数変調し,測定対象物の空間構造(特に深さ方向の空間情報)を探る。32チャンネルのデータ収録システムを構築した。自動回転ステージ(測定対象物を精密に角度スキャンする)と1Uラックマウント解析サーバーを小テーブルに収納し,データ収録ソフトウェアLab VIEWを用いてこれらを統合制御する。解析サーバー上のGUIを通じて,照射周波数制御・測定対象物の角度スキャン・反射波のデータ収録・断層像再生に至る一連の診断過程を一貫して行うことができるようになった。16個の角錐ホーンアンテナ(E面)からなる受信器アンテナアレイの開発を進めている。現在4チャンネルが完成し,動作試験において反射強度と位相信号を計測することができた。マイクロ波CTの解析方法とそのコーディングについて共同研究会を3回開催した。CT法アルゴリズムを専門とする岩間教授(大同大学)・寺西准教授(広島工業大学)と共に,ボルン近似法を用いてグリーン関数行列の非線形方程式を解くことにより,複素誘電率分布関数(測定対象物の断層像)を求める解析手法を考案した。マイクロ波CTの初期実験データに対してこの解析手法を適用する予定である。
|