研究概要 |
H22年度も引き続きマイクロ波CTのハードウェア開発を進めてCTシステム全体が完成した。平面波照射コルゲートホーンアンテナ用の角度掃引式光学ベース,および,被測定対象物用の自動回転ステージが完成した。また,直交復調ICを利用した位相計測モジュールをシステム本体に組み込み,周波数変調よる位相測定の動作確認が完了した。CT装置の最適化とCT解析コード開発に向けてC言語プログラミングを用いたFDTD法(有限差分時間領域法)によるマイクロ波の伝搬・散乱の計算機シミュレーションを行った。被測定対象物(アクリル誘電体,乳がん模型)の大きさについて数ミリの差を判別できる空間分解能を得るには5度以下の刻み角度で被測定対象物を周囲から測定する必要があること,また,反射強度のみを測定する既存の方法では空間分解能は0.2λ程度(実際の乳がん検出に換算すると3~5mm)が測定限界になることが予想され,精密な位相測定による空間分解能の向上が必要であることを確認した。固有インピーダンス整合のため被測定対象物と検出器の間に高誘電率の整合液を充填させる方法を試みた。高誘電率グリセリン中においてマイクロ波の送受信試験(直線偏波・円偏波)を行ったところ,液中における伝送損失が非常に大きく実用性の観点も含めて,本研究のマイクロ波CTでは空中伝送,あるいは,肌にインビーダンス整合クリームを薄く塗付して検出器素子を密着させる方法を採用することにした。また,パルス照射型マイクロ波CT装置の開発に着手した。パルス計測装置は非常に高価で導入が困難であるが,Comb Generatorという特殊な半導体素子を用いると安価な任意信号発生器を使ってマイクロ波パルスを容易に発振できることが判り,パルス発振回路(時間幅100psec)を設計した。これに対応できる広帯域円偏波アンテナ(帯域2~20GHz)の試作品も完成したので,次年度よりパルス波照射型マイクロCTによる初期実験を行う予定である。
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