フロケの定理には様々なバリエーションが存在するが、応用上重要な実係数であるという制約と周期を保存するという制約の両方を課すと、表現不可能となる場合が存在する。昨年度の研究では、この問題に対する統一的な解として、従来のフロケ分解とは異なる分解を導出した。すなわち、フロケの定理では基本行列を周期関数と指数関数の積に分解するのに対し、本研究では基本行列を周期関数と2個の指数関数の積に分解することを提案した。引き続き、得られる分解を応用することにより、時不変システムでのモード分解に対応する標準系を構築した。分解形を構成するという観点からは、新しい標準形は、周期関数が周期システムの周期性を受け継ぎ指数関数が周期システムの時間発展を特徴付ける点でフロケの定理と共通しており、さらに新たに追加した指数関数が周期システムの周期性と時間発展の両方の特徴を担うことにより、周期保存の性質を回復することを可能とした。分解形の形式を固定して基本行列の特徴づけを行うという観点からは、周期関数や2個の行列指数関数の制約を可能な限り緩和するという最大パラメトリゼーションの問題を考え、周期システムの基本行列が備えるべき本質的な構造を明らかにした。分解形を用いて周期システムに座標変換を施し簡略化するというリアプノフ・フロケの定理の拡張という観点からは、フロケの定理で述べられている時不変システムへの座標変換が必ずしも可能でないということが問題となるが、本結果を用いると高々基本周波数成分を持つような周期システムに必ず座標変換を行うことが可能であることを示した。以上の理論面の特徴に加え、得られた結果の制御系設計問題への応用としては、部分的な特性定数配置問題への適用も検討が可能であり、制御系の可安定性の解析に役立つ。
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