研究概要 |
本研究では,ロバスト半正定値計画問題(ロバストSDP)と呼ばれる数理計画問題に対する厳密解法を確立すると同時に,制御分野において従来より培われてきたシステム論的手法との有機的結合によって,ロバスト制御系の新たな解析・設計理論を確立することを目的とする.本研究で取り組む研究課題は,以下の二つに大別される. (I)ロバストSDPに対する,階層的なSDP緩和問題の構成,ならびに計算結果の厳密性を検証するための条件の導出. (II)不確かな物理パラメータを有する制御対象に対する,ロバスト制御系の設計法の確立. 平成22年度においては,とくに(II)に焦点を絞り研究を遂行した.具体的には,不確かな物理パラメータを有する離散時間線形時不変システムおよび周期時変システムに対して,周期時変のメモリー型ロバスト制御器の設計を可能とするSDPを導いた.また,この周期時変制御器の設計手法が,これまでに提案されてきたいくつかのロバスト制御器設計手法を包含する一般的かつ有効なものとなっていることを明らかとした.得られた研究成果を論文としてまとめ,学術雑誌にて発表した.また,この研究に着想を得た,離散時間線形周期時変システムのロバスト性能解析手法に関する論文も,学術雑誌にて発表した. これらの研究はLAAS-CNRS (FRANCE)に所属するD.Peaucelle博士およびD.Arzelier博士と共同で進めている.現在,彼らが主導的な役割を担い,得られた設計手法を人工衛星の軌道制御へ適用すべく研究が進行している.計算機シミュレーションを通して周期時変制御器の有効性が明らかとなる一方,問題の規模の大きさに起因する制御器設計に要する計算時間の増大が問題となっており,この点を克服することが今後の課題の一つである.
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