研究概要 |
これまでの制御理論研究において対象としていたシステムは,入出力信号が連続的な値(連続値)となるものであった.一方,現実のシステムでは,入出力信号が離散的な値(離散値)となる場合も多い.たとえば,ON/OFF型の電磁弁がアクチュエータとして使われる場合が代表的である.このような離散値信号を含む動的システムの制御「量子化制御」は,ハードウエアの限界を超える機能を制御アルゴリズムとして実現するものであり,エコロジー化・知能化・ナノ化といった次世代型の社会的要求に対する制御工学からの回答のひとつとなる.このような背景のもと,本課題では,実応用を志向した新たな量子化制御理論の確立を目指して研究に取り組んでいる. 本年度の前半では,一般的な非線形システム(入力アファインでないシステム)に対する量子化制御の検討を行った.そして,前年度の成果を拡張する形で,性能の上界が保証された量子化制御器の導出に成功した.これによって,かなり広いクラスのシステムに対して,高い性能を発揮する量子化制御の実現が可能となった.本年度の後半では,むだ時間を含むシステムに対する量子化制御を検討した.その結果,このクラスのシステムに対しては,前年度までに得られている量子化制御の方法が,ほぼ直接的に適用できることがわかり,むだ時間の存在は量子化制御の実現に大きな影響を及ぼさないことを明らかにした.前年度と以上の成果によって,非線形性・不確かさ・むだ時間を含むシステムの量子化制御法を完成させることができた.
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