研究概要 |
本研究の目的は,利己的なプレイヤーからなる複数集団間め相互作用により生じる社会問題を分析し,問題解決に導く制御手法を確立することである.さらにその結果を,異なる送信元と送信先でデータを送信する複数種類のフローのルーティングに適用することで,利己的に振る舞うホスト間の利益を調停し,ネットワーク資源をより有効に活用するための制御手法を確立することを目指す. 本年度は,複数集団間の相互作用のモデルとして,集団間の相互作用の割合に偏りのあるモデルを新たに提案し,2集団の場合の平衡点の安定条件を調べた.ネットワークの制御への応用に関しては,送信元が複数で送信先が1つの場合の利己的ルーティングを,1つの送信元-送信先間のフローを1つの集団と考えることで複数集団進化ゲームによってモデル化し,その性質について調べた.送信元が1つの場合の利己的ルーティングにおいてデータの伝送遅延が最小となるフローが実現されない状況としてはプライスのパラドックスがよく知られている.しかしながら,複数の送信元が混在する状況では,各送信元からのフローの伝送遅延の間にトレードオフが存在し,単純に最小遅延フローを考えることはできない.そこで,パレート最適の概念を導入することでプライスのパラドックスを,送信元が複数の場合に拡張した・さらに,送信元が2つの場合に限定して拡張したプライスのパラドックスが生じる条件について明らかにした. また,複数集団進化ゲームの別の工学的問題への応用として,ある領域を効率的にセンシングするために複数のセンサを配置する被覆制御問題を考えた.センサの位置を重心座標系で表現することでポテンシャルゲームに変換し,進化ゲームのレプリケータダイナミクスを用いることで,最適なセンサ配置を分散的に求める手法を提案した.
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