本研究は、生体システムがノイズを巧みに利用している原理である確率共振(SR)現象を人工の制御システムに取り入れ、生体のようにしなやかで臨機応変な能力を生み出す制御方法の確立とアナログ電子回路を用いた制御デバイスの創成を目的としている。H21年度は、SR型ニューロン素子を用いたリング発振器(SRリング発振器)に光センサを取りつけ、光によって発振パターンを変調することができる光制御型SRリング発振器デバイスの開発を行った。さらに、この発振器デバイスを組み合わせた制御システムを実現し、ノイズがシステム制御に与える影響を調べた。 1. 光情報によるSRリング発振器の発振パターン制御 SR型ニューロン素子の出力調整部分に光りセンサを取り付けることによって、外界からの光情報で素子の出力を変調できるようにし、この素子でSRリング発振器を作製することで、光で発振周波数が変調できる光制御型SRリング発振器を実現した。この発振器は、光が強いときには発振周波数が遅く、また弱いときには速くなり、光によって発振器の発振周波数が制御可能であることが分かった。 2. 光制御型SRリング発振器を用いたSR制御システムの作製 2つの光制御型SRリング発振器を用い、それらの出力を論理演算することによって光が強く当たっている側の発振器に符号付けされた制御信号を得ることができ、さらに論理演算後の信号を用いて一次元移動体の動作にフィードバックをかけると、光追随型の制御が実現できた。このとき、システムに加えるノイズ強度を変化させると、挙動が大きく変化し、ノイズ強度が大きいときは動作が小刻みになり、ノイズが小さいと大まかになった。このノイズ強度依存性が光追随制御に及ぼす影響を調べたところ、ノイズ強度が大きければ臨機応変性が高くなる一方、最終目的位置までの到達時間は増加し、ノイズ強度が小さい場合は逆になることが分かった。
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