研究概要 |
2009年度においては,離散時間力学の制御工学への応用を目指し,基礎と応用の両面から以下のような研究を行った.(1) 離散時間力学でモデリングされた台車型倒立振子に対して,離散時間最適レギュレータを用いた制御系設計法,ならびに0次ホールド型連続時間入力への変換手法を提案し,通常の連続時間台車型倒立振子の安定化制御をシミュレーション,さらに実機実験で確認することができた.(2) 離散時間力学でモデリングされた台車型倒立振子に対して,エネルギー法と安定化手法を用いた振り上げ制御法を提案し,通常の連続時間台車型倒立振子の振り上げ制御を行うことができた.(3) 離散時間力学を用いてコンパス型2足歩行ロボットのモデルを定式化し,その歩容生成問題を逐次2次計画法に帰着させることによって,効率的にコンピュータで解くことができた.これによって「離散時間歩容」という新しい概念を提案した.(4) 一般的な離散時間Euler-Lagrange方程式が平衡点において陽関数となるための十分条件を導出し,通常の整形制御理論が適用できる場合の判定が容易になった.以上の結果は,国際・国内学会において発表を行っており,さらに学術論文として投稿を行っている.そしてこれら一連の研究は,コンピュータが必要不可欠な昨今の非線形制御理論において,コンピュータと親和性の高い制御系設計のツールを提供するための基礎的な研究であり,今後,様々な非線形システムへの応用可能性を持っていると言える.
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