研究概要 |
本研究課題の最終年度に当たる平成23年度においては,非線形力学システムの新しい離散化手法である「離散時間力学」の制御工学ならびにロボット工学への応用を目指し,主に以下のような研究テーマに取り組んだ.1.離散時間力学システムの数学的構造の解析を行い,陰関数方程式として表される離散時間力学システムならびにその線形近似システムが陽関数となるための条件を導き,従来の制御理論が適用できるかどうか検討を行った.2.連続時間システム,さらに実機への適用を目指すため,離散時間力学システムに対して得られた離散時間入力から連続時間零次ホールド型入力へ変換するための新しい方法を提案した.3.非線形制御理論のベンチマーク的システムである「台車型倒立振子」の離散時間力学システムに対し,入力の二乗和などの評価関数を設定した最適制御問題を定式化すると,それは有限次元非線形最適化問題に帰着できるので,逐次二次計画法などの方法で解くことができる.その方法を応用して台車型倒立振子の振り上げ制御を行い,シミュレーションによって有効性を示した.4.ヒューマノイドロボットの簡易的モデルである「コンパス型2足歩行」に対し,これまでに行ってきた平地・下り坂・上り坂での安定歩容生成手法を応用して,不整地での安定歩容生成問題に取り組み,シミュレーションによって有効性を確認した.5.非ホロノミックシステム・時変システムなど,より広いクラスに対する離散時間力学の拡張・モデリング・制御理論的解析を行い,これまでに知られていなかった新しい結果を導出した.本研究課題たよって,「非線形システムの離散構造」という,これまでほとんど考えちれていなかった問題に取り組み,様々な新しい知見を得ることができた.また,上記の研究結果は,国際誌・国内誌・国際学会などで発表され,対外的にも研究成果をアピールすることができた.
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