研究概要 |
本研究の目的は,安定化フィードバック制御則を設計することが難しい制御対象に対する制御手法として申請者らが提案している「最小射影法」「局所同次性を保証する制御則設計法」を拡張し,新たな非線形制御理論基盤を構築することである. 最小射影法は,制御系が定義された空間とは異なる空間上で制御問題を再解釈することにより問題を簡単化する手法である.従来の最小射影法は,単一の異空間を利用していたため,異空間の設計が難しく,限られた制御対象にしか適用できなかった.そこで,本年度は多数の異空間を利用する多層最小射影法を提案した.さらに,最小射影法は,強制御Lyapunov関数,厳密な制御Lyapunov関数の設計にも利用可能であることを明らかにした. 最小射影法によって設計した関数は,通常局所半凹制御Lyapunov関数になるが,これまで局所半凹制御Lyapunov関数を利用した制御則の設計は不十分なものしかなかった,そこで,局所半凹関数はかならず滑らかな関数の最小をとることによって構成されているという点に着目した新しい制御則を提案した.さらに,最小射影法によって設計された局所半凹制御Lyapunov関数は一般的な局所半凹制御Lyapunov関数と比較して制御則設計に優れた関数となっていることを明らかにした. 局所同次性は,一般的に固定した座標系において定義されており,座標変換に対する不変性は議論されてこなかった.そこで,本年度は,もっとも都合の良い固定座標系において設計した局所同次制御則は,任意の座標系に対して収束速度を保証することを明らかにした.これにより,同次系と一般的な非線形系で異なっていた収束速度の定義を統一することができた.
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