研究概要 |
HJB方程式の数値近似解の導出法は数多く提案されている.本研究ではコンパクトな多様体上の制御系に対して,有限差分近似認こよるHJB方程式の粘性解の近似解放を導出するアルゴリズムを提案した.多様体上の制御系の最適制御則を導出する数値近似解法は今までに提案されておらず,今回の結果は多様体上の制御系の設計論において重要な第一歩となるものである.後述するように,ユークリッド空間上の制御系では陽に出てこない多様体上の制御系固有の問題が発見され,これらの問題の解決策・条件の緩和などが今後の大きな課題として残っている. 多様体上の制御系の最適制御の値関数は一般には連続微分不可能な粘性解となる.そのため,近似解の導出に有限差分近似を利用することで粘性解の近似解の導出を可能とした.しかし,今回求めた方法では,状態空間の境界条件がすべて内向きであるという仮定,有限差分近似を求めるため格子状に格子点を取ることができるという仮定が必要となっている.これらの改善のため,局所座標系と有限差分近似の計算法との関係についてより深い考察を行う予定である.また,有限差分近似以外に粘性解を導出可能なアルゴリズムの開発・比較などが考えられる. また,アルゴリズムの実行例より,粘性解の微分不可能点において近似解の収束に時間がかかるという特徴が発見された.この点の改善案として,局所座標系の取り方の工夫,または最小射影法(中村ら)の概念を利用した座標系の取り方を用いる方法などを検討することが予定されている.
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