研究概要 |
クリープ変形に代表される地下コンクリート構造物の時間依存性変形に伴う土圧変化のメカニズムを明らかにし,地下構造物の合理的設計手法を提案することを目的として,1)構造物-地盤間の静的相互作用(土圧)の経時変化を考慮した性能照査手法の開発,2)地下RC構造物の合理的な設計法(常時,地震時)の提案,を行った。有限要素解析コードを用いた解析的検討により,地中ボックスカルバートの構成部材の時間依存変形と,それに伴う作用土圧変化を評価する手法を提案した。また,カルバート部材の断面寸法や配筋をパラメトリックに変化させる試設計を行い,これに対してクリープ変形を考慮した長期安定性解析を行って,常時の静的安定性が確保される断面諸元を示すとともに,クリープ変形が進行した構造物の地震時安全性について,工学的基盤面にレベル2地震動を入力する地震応答解析を実施することによって検討を行った。これにより,長期クリープ変形に伴う作用土圧の緩和により,設計時においてコンクリートの許容圧縮応力を圧縮強度の0.5~0.6程度まで高くした場合でも,常時の静的安定性と地震時安全性の両方を確保可能なことを明らかにし,結果として部材断面の縮小化および内空間の拡大が見込めることが明らかとなった。社会基盤を構築する地表空間が制限される今後の日本において,地下空間の有効利用は喫緊の課題であり,その観点から本研究成果は地下構造物のより合理的な設計・構築を可能とする端緒となるものと言える。
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