研究課題
疲労を受ける鉄筋コンクリート部材の曲げひび割れが塩害による鋼材腐食に及ぼす影響について、前年に引き続き検討をおこなった。ひび割れと鋼材腐食に関する既往の文献の調査では、既往の文献ではひび割れの幅、載荷条件、環境条件等が分離されていないために、ひび割れと腐食の関係性が必ずしも明確ではないと結論付けられているものもあることを明らかにし、再評価を行った。前年度の実験では、比較的短期の腐食促進実験においてひび割れの影響を検討し、乾湿繰り返しにおいてひび割れの鉄筋近傍の幅が鋼材腐食に対して影響を及ぼすことがわかった。今年度は、それが長期的にも影響を与えるのかについて、さらに暴露実験を継続して検討をおこなった。供試体は長さ2400mmの梁部材、実験のパラメーターは、かぶりの大きさ(30mmから100mmまでの4段階)とし、載荷条件は、実構造物の載荷状態を考慮して、活荷重相当の載荷後、除荷を行い死荷重相当の載荷を保持することとした。腐食発生の判定は自然電位および、分極抵抗とした。70mmと100mmのかぶりにおいて、短期では腐食挙動の差が見られたものの、暴露開始後約1年の時点において、両者の腐食速度の差は見られなくなっていた。この理由については、既往の知見では、腐食回路においてかぶりの透気性が卓越したためひび割れ幅の影響がなくなったとの説もあるものの直接的に測定していないため、断定できていない。短期において影響を与えたと考えているひび割れの鉄筋近傍の幅などのひび割れの幾何学的特徴が、その後の暴露において、乾燥収縮等により変化していることも考えられるため、今後ひび割れの幾何学的な情報も得る必要がある。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集
巻: 10 ページ: 255-260