研究概要 |
本研究は,耐火性能は要求されていない鋼製橋梁構造物に着目し,火災発生時の鋼製橋梁の挙動の特徴を明らかすることにより,鋼製橋梁に耐火性能を要求するべきかを検討することを目的とする.本年度は,まず,国内外における過去の鋼製高架橋の被災事例および損傷事例の収集を行った.鋼製橋梁が火災を受ける原因には,走行中の車両事故,野焼きの延焼,野積みタイヤの自然発火,工事中の事故による火災などが挙げられるが,そのうち被害が甚大であった事例は,やはりタンクローリーの事故による火災であり,そのようなケースでは,鋼橋は1000℃以上の火炎に1時間以上曝される場合があることが分かった.次に,鋼橋に使用される鋼材の高温時の弾性率,降伏応力,クリープ特性などの情報を過去の研究から収集し,高架橋の有限要素解析に使用できる入力データとした.特に高力ボルトは,一度高温にさらされると温度が低下しても,強度が大きく低下することが過去の研究から分かっており,高架橋の火災時挙動を把握するための熱応力解析では,そのモデル化が非常に重要であることが分かった.最後に,タンクローリーの火災事故を想定した鋼製橋脚の熱伝導解析を行った結果,鋼材の温度が約1000℃近くになる部分が存在し,その継続時間も数十分のオーダーであることから,鋼橋の変形挙動を正確に評価するためには,高温時の材料強度のみではなくクリープ特性も考慮する必要があることが分かった.
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