研究概要 |
2008年8月に起きた首都高速道路でのタンクローリー火災事故のように,火災による橋梁構造物の損傷の程度が甚大でない場合でも,火災事故がもたらす経済的損失は甚大になることが予想される.本研究では,橋梁構造物の中でもコンクリート構造物よりも火災による影響が大きいと予想される鋼製橋梁に着目し,火災発生時の鋼製橋梁の挙動の特徴を明らかすることにより,鋼製橋梁に耐火性能を要求するべきかを検討することを最終的な目的とする. H21年度からの調査研究により,火災時の鋼部材の挙動は,温度分布や材料の機械的特性により大きく変化することが分かり,H22年度は橋梁に使用される鋼材の高温材料試験を行い高温時の機械的特性を把握することを目的とした. 鋼種として,橋梁で頻繁に使用されるSM490Yと高張力鋼であるSM570TMCに加え,近年開発された橋梁用高張力鋼であるSBHS500およびSBHS700を選択し,試験温度には,室温23℃,100℃,200℃,300℃,400℃,500℃,600℃,700℃,800℃の合計9温度について,材料試験を行い,各温度での降伏応力,引張強度,ヤング率を同定し,温度が機械的特性に与える影響について検討した. その結果,温度が降伏応力,引張強度,ヤング率に与える影響に関して,SBHS500は,SM570TMCとほとんど差のない結果となり,SBHS700は高温時のヤング率の低下率がSBHS500とSM570TMCと比べ数%低下する傾向を示したが,全体的には,SBHS500とSM570TMCと大差のない結果となった.したがって,SBHS500およびSBHS700の降伏応力,引張強度,ヤング率に与える温度の影響は,従来の高張力鋼での知見を適用できることが明らかとなった。
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