研究概要 |
本研究は,高力ボルト摩擦接合継手の腐食劣化状態や腐食後の残存耐力を評価するため,高力ボルト摩擦接合継手供試体を腐食促進試験により腐食させ,腐食が進行するに従って接合面の錆厚や表面粗さの変化を調べるとともに,それらの変化が継手のすべり耐力とすべり係数にどのような影響を及ぼすか,また,部材の断面積の減少が継手の降伏耐力と終局耐力にどのような影響を及ぼすかを検討した.腐食促進試験は,上下式乾湿繰返試験法を採用し,5%NaCl溶液中に浸漬→自然乾燥を1サイクルとして行った.腐食度の評価は,写真撮影,錆厚測定,表面粗さ測定,板厚測定,板幅測定によって行った.耐力試験では,万能試験機を用いて継手に引張荷重を加え,継手のすべり耐力,すべり係数,降伏耐力,すべり/降伏耐力比,終局耐力を測定した.本年度は,腐食促進期間として0サイクル,80サイクル(約2週間),281サイクル(約7週間),および761サイクル(約19週間)の結果を得ることができた. 本年度の実験結果より,接合面の錆厚の増加にともなって継手のすべり耐力とすべり係数は増加すること,また,母板の純断面積の減少にともなって継手の降伏耐力と終局耐力は低下することがわかった.また,腐食促進試験期間80サイクルおよび281サイクルでは,接合面の算術平均粗さRaと継手のすべり耐力,すべり係数との間には明確な相関は見られなかった.今後の課題として,さらに腐食が進行した際,これらの相関がどのようになるかを検討する予定である.
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