研究概要 |
本研究課題では,既設コンクリート構造物が塩害と凍害の複合劣化を受け生じたスケーリングによる表層部の劣化の程度を現地で測定する方法を構築し,その劣化度を定量的に評価する手法を開発することを目的としている.平成21年度は,本研究課題である評価手法の確立を目的とした凍結融解試験を実施した供試体は,既設コンクリート構造物における計測を想定し,縦3000mm×横2000mm×高さ200mmとする大型の版状供試体と小型のかぶりや鉄筋量をパラメータとした供試体を作成した.この供試体に対し,湛水法による融雪剤を用いた凍結融解試験を行ったもので,通常の凍結融解試験同様,凍結融解回数の増加に伴うスケーリングによりはく離したモルタル片等の採取と粗骨材の露出状態の計測,そして,本研究課題で開発を目指すスケーリング深さ測定を行った.スケーリング深さ測定は,試験面水平方向(X変位)と深さ方向(Z変位)の変位により凹凸形状の測定を行うもので,Z変位計がガイドレール上を移動し,X変位による移動量との関係から凹凸形状を測定するシステムを製作した.そして,測定値の解析により,計測間隔や計測距離等の評価に必要なデータの収集,および計測精度の検証から,スケーリング劣化を評価するに十分な計測が可能なことを確認した. 今年度の実験結果からは,実物大RC床版でも十分な精度でスケーリング深さを測定できることが確認でき,測定結果を基に塩害による腐食ひび割れの有無による劣化形態を整理することができた.また,鉄筋の有無,鉄筋量,およびかぶり厚の違いでスケーリング量が変化し,かぶり厚が大きく,鉄筋量が少ない方がスケーリング量は増加し,かぶり厚が大きい場合,局所的にスケーリング劣化が進行する傾向を示すことを明らかにした.
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