研究概要 |
本研究課題では,既設コンクリートのスケーリングによる表層部の劣化度評価を目的とし,スケーリングによって劣化したRC構造物表面コンクリートの劣化度を定量的に評価する手法を開発した.具体的には,スケーリングにより生じた表面の凹凸を深さで表し,これを基にスケーリング劣化度評価を行ったものであり,そのための計測システムも開発した.計測システムは,計測面の水平方向(X変位)と深さ方向(Z変位)の変位により凹凸形状を数値情報として取り込む仕組みである. 平成22年度は,スケーリングにより劣化した実RC部材(道路橋橋台:供用70年経過)の現地調査を実施した。現地にて開発した計測システムによりスケーリング深さを計測し,平成21年度の室内試験結果との比較より現地計測値の精度確認と,実RC部材のスケーリング劣化度評価およびスケーリング劣化進行予測を行った.その結果,計測面の平均スケーリング深さと最大スケーリング深さの関係は,ほぼ比例関係にあり,平均スケーリング深さが増加するとこれとともに局所的にもスケーリングが深く進行すると言え,かぶりコンクリートからの塩化物といった劣化因子の侵入を考えるとスケーリング劣化の評価は両者の進行の程度を評価することが重要であると考えられた,また,調査した橋のスケーリング劣化の進行を平均および最大のスケーリング深さと供用年数の関係より推定した.推定より,かぶり厚が30mmの場合,平均スケーリング深さは供用年数100年を過ぎても30mmには達しないが,最大スケーリング深さは供用年数約80年で鋼材位置に到達するということがわかった.このように,計測値を基に平均スケーリング深さと最大スケーリング深さを求めることで,将来のスケーリング劣化の進行が予測可能と判断された.今後は,3次元レーザー変位測定によりスケーリング深さ測定方法を合理化し,実用的な手法に発展させる予定である.
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