研究概要 |
本研究では,傾斜機能材料から成る構造要素の土木構造物への適用性を調べるために,その動力学的挙動を把握することを目的としている.本年度は,傾斜機能弾性体の動力学的挙動の理解に不可欠である静力学的特性と自由振動特性を明らかにするために,面外荷重を受ける周面単純支持された傾斜機能弾性体の変位,応力及びひずみエネルギーの解析解を導出し,構造解析プログラムを作成した.さらに,研究代表者が提案している構造解析法を用いて,任意の支持条件を有する傾斜機能弾性体の三次元応力解析,自由振動解析及びひずみエネルギー解析が実施可能な構造解析プログラムを開発した.これらの構造解析プログラムを用いて,傾斜機能弾性体の静力学的特性及び自由振動特性を明らかにした.本研究で得られた結果は,以下に示す通りである.(1)傾斜機能弾性体は,縦弾性係数比を二倍にするだけで,均質弾性体よりも変位を四割程度減少させられる.また,板厚方向の応力分布は均質弾性体と異なり,弾性体内部で一様分布を成し,弾性体下面での引張応力を低減できる.(2)傾斜機能弾性体では,面外荷重を受ける弾性体上面に高い縦弾性係数を配すことにより,最大主応力を低減することができ,高い材料強度を得ることができる.(3)本解析法による変位,応力,固有振動数,固有振動モード及びエネルギー成分は,解析解と同等の精度かつ三次元有限要素解よりも高い精度が得られることを確認した.(4)傾斜機能弾性体の基本曲げ振動では,弾性体上面に高い縦弾性係数を配すことで,均質弾性体よりも固有振動数を増大することができる.他方,弾性体下面に高い縦弾性係数を配すと,均質弾性体よりも固有振動数が低下する.(4)傾斜機能弾性体は,均質弾性体よりも基本曲げ振動における面外せん断変形の影響を小さくできる.また,均質弾性体よりも面内変位の影響が現れてくることを確認した. (788文字)
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