自然斜面、特に「流れ盤斜面」が地震時に平面すべり様の大規模崩壊を起こすことが良く知られている。本課題研究では、流れ盤斜面の内部に弱面として存在する層理面の力学特性を類型化するための各種の基礎的研究を行うことを目的とした。このような研究は、中山間地が巨大地震に襲われた際の土砂災害の軽減に極めて有効である。 今年度は以下の3点の研究作業に着手した。 (1)層理面を挟在するブロック状不撹乱試料の採取法の検討 (2)層理面の地震時力学特性を把握するための室内試験法の検討 (3)地震時に層理面に作用する荷重条件の解析的検討 (1)について、新潟県柏崎市の聖ヶ鼻地区の大規模地すべり(2007年新潟県中越沖地震で発生)の現場近傍の流れ盤構造の顕著な露頭から、地震時に強度低下することが懸念される層理面を挟在するブロック状の不撹乱試料の採取を試みた。予想以上に層理面の引張り強度が小さく採取作業は難航したが、必要な物品の購入、専門技術者の協力等の試行錯誤により、室内試験に供しうる試験体の削出が成功した。 (2)について、採取試料の室内試験の実施にあたり、地震時に実際に層理面に作用した力学条件(繰返し載荷、等体積条件、適切なせん断モードなど)を考慮した試験方法を検討した。既存の試験装置を製作・改造し、地震時に層理面が強度低下するメカニズムを試験室内で再現することに成功した。 以上を踏まえて(3)の検討を行った。数値解析には研究代表者が開発した動的弾塑性有限要素解析コードを使用した。(2)で得られた力学特性を表現しうる構成モデルを導入して、既往地震の観測波形を用いた地震応答解析を行い、解析の結果得られた層理面内の応力ひずみ径路等から実際の地震中に層理面に作用する外力の条件を明らかにした。 次年度には、以上の成果を取りまとめ、流れ盤斜面の力学的特徴と減災対策について考察を行う。
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