研究概要 |
旧日本道路公団による軟弱地盤上への盛土載荷事例は全国で約50地区以上あるが,そのうち約2割の地区で供用後に残留沈下が1m以上発生し,深刻な問題となっている.研究代表者らはこれまでに,軟弱粘土地盤上への盛土載荷による沈下の実態および各種現場データ,沈下の主要因となった軟弱粘土に対する室内試験結果を収集・整理し,「大きな残留沈下の可能性がある軟弱粘土の室内力学試験による事前判定法」を提案してきた.また,原位置粘土の持つ高い圧縮性を推定し,沈下の再現および将来予測を数値解析により行ってきた. 今年度は,より広範な種類に土に対して上記の判定基準および沈下予測を適用することを目的として,対象をこれまでの粘性土からピートに拡大し検討した.対象とした現場は福井県敦賀地区における高速道路用盛土の載荷現場であり,超軟弱なピートを含む軟弱層が50mもの厚さで堆積し,試験盛土を行った結果,10mを超える大沈下が発生している.現在も沈下は継続中であり,残留沈下の予測に基づく有効な対策工の検討が必要急務となっている.現場関係者と研究連携により,原位置からの採取試料および室内試験データが豊富に入手できたため,今年度はまずデータの整理・考察を集中的に行い,ピートの力学特性の把握を行った。その上で,現場で現在までに観測された沈下の再現計算を行い,引き続き同条件で計算を続けることで沈下の将来予測を行った.この結果,ピートは初期には大間隙を有し盛土載荷により急激な大圧縮を示すが,ある程度間隙が小さくなってくると透水性が極端に悪くなり過剰水圧がなかなか消散しないため,長期に亘る大沈下を引き起こしたことが本解析より予想された.
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