| 研究概要 |
都市部では地上あるいは地中に様々な構造物が存在するため,新たにトンネルを掘削する場合には,トンネルや周辺地盤の安定性だけでなく既設構造物への影響についても把握する必要がある.しかし,現行のトンネル設計体系では,トンネルへの作用土圧はTerzaghiの緩み土圧理論をはじめとする剛塑性論に基づいて予測し,地表面沈下形状は正規分布曲線によるフィッティングなど経験的手法や弾性解析により予測しているため,施工過程の影響やトンネル-地盤-近接構造物の力学的相互作用を考慮できない.一方,これまでBoscarding and Cording_<3)>やFranzius, et al., Jacobsz, et al.など多くの研究者がトンネル-地盤-構造物の相互作用メカニズムの解明とトンネル掘削時の土圧・変形特性の予測に取り組んでいるものの,既設構造物に近接したトンネル掘削は施工条件や施工過程,地山条件,構造物との離隔,既設構造物の種類や規模など諸条件が絡み合う複雑な現象であるため,トンネル-地盤-構造物の力学的相互作用は完全には解明されていない.本研究では,構造物基礎に近接して浅いトンネルを掘削する際の周辺地盤の力学・変形挙動について,2次元モデル実験と非線形有限要素解析による検討を行った.実験結果より,トンネルに作用する土圧や地表面沈下は既設構造物の影響を受けてトンネル中心軸に対して左右非対称な分布になることがわかった.また,トンネル掘削に伴って既設基礎の沈下量や回転方向は土被りや基礎形式,杭長に大きく依存することがわかった.さらに,地盤材料の力学特性を適切に考慮した数値計算は実測データを精度良く捉えていることから,本解析手法が実現象を予測できることが示された.
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