研究課題
従来、トンネル周辺地山の力学挙動に関する実験的検討は、落し戸の下降や円形・馬蹄形装置の収縮により掘削を模擬する変位制御型の実験と、エアーバッグの減圧により応力解放を模擬する応力制御型の実験が主流であった。しかし、前者は内空変位を予め仮定する点で、後者はトンネル周面に常に均一な土圧が作用する点で実際のトンネル掘削を必ずしも正確に模擬していなかった。平成21年度と平成22年度の検討では、トンネル径の収縮量と鉛直・水平方向の作用土圧の釣り合いを同時に満たすトンネル掘削模型装置を用いて、より現実的な条件下でトンネル周辺地山の応答を検討するとともに、数値解析的な検討を実施した。トンネル周面の土圧分布では、新型装置を用いることで収縮終了時における土圧分布は変位制御型の従来の実験結果に比べて周面土圧の偏りは小さい。トンネル周辺の変形分布では、インバート付近からせん断変形を生じるが、せん断帯が地表面近くまで達した。このように、実際のトンネル掘削に近い状況を再現した、トンネル周辺の土圧特性や変形分布が必ずしも中心固定や下端固定に一致するのではなく、地山物性や土被りに応じてその中間的な応答を呈することがわかった。実際のトンネル掘削を精緻に表現した新型装置の実験では下端固定条件の変位制御型実験に似た結果が得られたが、偏土圧が緩和されるなど従来型に比べて実問題に近い現象を再現できることが示された。都市部のトンネル掘削では、従来の経験則や弾性解析では把握しきれない様々な現象が起こっていることが分かった。そして、特に近接施工を行う場合において、非常に危険な状況を伴うという結果が示せた。今後都市部の地下空間が過密化していく中で、近接施工は避けては通れない問題である。したがって、施工の安全性向上やコスト削減のためにも、必要に応じて本解析で実施したような精度が高い設計手法を今後の現場で取り入れていくことが必要である。
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Soils and Foundation
巻: vol.51, no.3(登載決定済)
http://www.cm.nitech.ac.jp/jiban/english/Staff/Shahin/index.html