研究概要 |
本研究では自然由来の微生物を用いた既存宅地の耐震補強工法の開発をめざし、微生物を用いて改良された地盤の特性について実験的に検討を行った。本研究では微生物が栄養源を取り込む際に排出する炭酸ガスが地中の水に溶け込むことで、地盤内のカルシウムイオンと結合し、炭酸カルシウムを生成ことを利用している。 まず、菌の違いによる炭酸カルシウムの生成速度の違いについて検討した。研究に用いた菌は、ATCCより購入したSporosarcina Pasteuriiである。ATCCに数種類のSporosarcina Pasteuriiが登録されているが本研究で使用したのは、No.11859とNo.6453の菌である。ビーカー内で尿素,塩化アンモニウム,炭酸水素ナトリウム,Difco Nutrient Brothと混ぜ、炭酸カルシウム生成度合いを示す指標としてpHの変化を調べた。その結果、No.11859の方が、No.6453に比べ、2倍程度反応速度が速いことが分かった。 次に土壌の違いによる改良効果の違いを調べるため、豊浦砂とまさ土を土試料とし、微生物(No.11859)を用いて改良した供試体の三軸圧密排水試験を行い、せん断強度を調べた。その結果、相対密度がDr=15%と非常に緩い供試体であったにもかかわらず、軸ひずみ-せん断応力関係にピークが見られるなど、改良効果が認められた。また、豊浦砂では軸ひずみ5%ぐらい、まさ土では10%ぐらいでピークとなり、土によって違いが見られたが、せん断強度はほぼ同程度であった。 繰返し特性を調べるため、豊浦砂(Dr=30%、40%)を改良した供試体を用いて繰り返し三軸非排水圧縮試験を行った。その結果、繰返し応力が大きい場合、未改良供試体では、2回目の載荷で液状化(過剰感激水圧比が1に達した)に至ったが、Dr=40%の改良供試体では10回以上載荷しても液状化に至らなかった。また、微小なひずみに対しては、改良供試体の方が等価ヤング率が低くなったが、ひずみレベルが0.1%を超えるような大きなひずみレベルになると、改良供試体の等価ヤング率が大きいなど耐震補強効果があると考えられる。
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