研究概要 |
我が国の山岳部におけるトンネル建設ではNATMによる施工が行われているが,近年は地すべり地帯,膨張性地山,都市域の砂質地山などトンネルの変形が大きく生じる地山での施工例が増加しているとともに,将来的に発生が想定されている大規模地震に対する構造物の安全性確保も求められている.本研究は,経済性と安全性を兼ね備えたトンネル構造として,過大な変形に追従し,外力を吸収できる「柔なトンネル構造」を提示し,実験的・解析的な検討を通じて力学的挙動等のメカニズムを解明するものである. 2010年度は,2次元実験土槽を用いた模型実験を行い,地山の材料として標準砂を使用した場合,および貧配合モルタルを使用した場合で「剛なトンネル構造」として支保構造のうち吹付けコンクリートと覆工が複合した場合のモデル化を行った実験と,「柔なトンネル構造」として吹付けコンクリートおよび覆工の天端部や側壁部に変形や外力を吸収するための装置を設置した実験を行い,両者の力学的挙動を比較した.その結果,同一の荷重を作用させた場合,柔なトンネル構造では剛なトンネル構造に比較して断面の変形が大きく生じる反面,ひずみの発生が抑制される傾向があることを明らかにしたとともに,断面内でひび割れが発生する箇所が異なり,ひび割れ発生後の変形や挙動が異なることが明らかとなった.また,これらの実験結果に対する数値解析を行い,実験の有意性について確認したうえで,トンネルの構造の挙動については地盤材料の特性を大きく受けることを確認した.
|